2013年5月12日日曜日

宮本輝ー僕は終生の文豪に出会った

先日、宮本輝の「ここに地終わり海始まる」を読み終えた。


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今までも宮本輝の作品は何冊か読んできたのだが、この本を読んで(厳密に言うと、小説そのものとその解説を読んで)、彼の作品をこれからもずっと、生涯を通して読んでいこうと決めた。


宮本輝の小説に一貫して見られるのは「再生の物語」らしい。

ここで「らしい」と使ったのは、この「ここにー」の解説に書かれてあったからで、言われてみればなるほど、その通りだと頷いてしまった。

「ここにー」に出て来る人たちも、8歳から15年くらい、病床生活を続けた24歳の女性が生きていく物語だし、他の登場人物も、背景は異なれど、失敗や挫折を経験して、なおかつそこから立ち上がって、前を向いて歩いていこうとする姿がそれぞれ描かれている。


今まで読んできた作品は河三部作、「ドナウの旅人」や「草原の椅子」、「流転の海」シリーズ等だが、確かに多くの作品では恋愛もテーマになっているが、その根底にあるのはそれぞれの「再生の物語」なんだと思う。


思えば僕が宮本輝に出逢ったのは、中学生の時だった。

当時使っていた国語の学習参考書の長文問題に出てきたのが、宮本輝の「蛍川」(芥川賞受賞作)で、クライマックスで蛍が幻想的に飛び交う光景が鮮やかに、そして瑞々しく描かれていたことが、僕の心に鮮烈に残った。

中学生だったか高校生の時には、「蛍側」「泥の河」「道頓堀川」を読んで、日本各地の方言の描写の上手さにも感嘆した記憶が残っている。


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大学時代や、卒業後も時々小説を手にして読んできた。

読んだ作品の数は決して多いとは言えないが、それでも各作品で描かれる人間模様の濃淡が、僕は好きなんだったと思う。


そして、「ここにー」を読んだ後で、もう一つ、僕が宮本輝の作品を好きな理由がわかった。

先程「人間模様」と書いたが、まさに登場する人の、それぞれの「物語」が好きなんだと思う。

言葉を変えると、それは「人として生きる喜び」のようなものだと思う。各作品で、その力強さをひしひしと感じることができるのだ。


僕は、小説は決して多く読んでいるほうではない。名作と言われる太宰治や芥川龍之介、夏目漱石などは何冊か読んだことがあるが、最近流行っている東野圭吾などは全く読んでいない。

ただ、宮本輝の作品が「人の生きざま」を描いているのに対して、今の日本で人気のある他の多くの小説や作家は、「人の生きざま」の他にも、「仕事の哲学」等の他のメッセージが含まれいると思っていて、僕はもしかすると、そういうテーマにはあまり興味がないのかもしれない。

実際に読んだことがないので、あまり詳しいことは述べられないが、山崎豊子の「白い巨塔」をはじめ、昨今は医療関係の小説も多いし、小説ではないが、よくテレビドラマや映画になっている物語も、どこかの「業界」の中の話であったりして、「仕事」をテーマにしたものが一定数あると思う。

今頭に浮かぶのは「県庁おもてなし課」「船を編む」「ショムニ」「ガリレオ」「Dr.コトー診療所」等…見た事がないのもあるので、間違っていたらごめんなさい。


何も、これらの小説やテーマ設定が悪い、と言いたいのではない。ただ宮本輝の小説で取り扱われているテーマは、仕事等を越えた、「人の生き方」という、もっと根源的・本質的なものになっていると思うし、僕はそちらに興味があるだけなのだと思う。


そう考えてみれば、僕はいつの頃からか人の「生き方」「生きざま」というものに興味を持つようになっていて、そんな縁でいろんな方とお会いする機会も頂いたのだから、やはり、自分の嗜好や哲学っていうのは、小説からも少なからず影響を受けるのかな、と思うようになった。


ただ、宮本輝の作品に対して肩を持っているような書き方であることは否めないが…。




いずれにせよ、宮本輝に出逢えてよかったと思うし、次回旅に出る時はバックバックの片隅に彼の小説を忍ばせて、歩みを進めるのもいいかもしれない。



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