今回も仕事の話。
この前、翻訳の案件を納品したら相手から「英語が苦手な私でも明らかに分かる、文法の間違いがありました。失礼ですが、どれ程の英語力なのでしょうか」というメールが後から届いてびっくりしました。
この仕事は、
・数ページの論文を日本語に訳す
・相手は大学生(授業かレポートでいるらしい)
というもので、クレームが来たのは料金が支払われてからでした。
クラウドソーシングサイトを使っての、ちょっとした案件だったのですが、まさかこんなクレーム(?)が来るとは思ってはいませんでした。
(そのメールではとりあえず謝罪をして、こちらの非を認めつつ、「どこが間違っているか、具体的に教えてもらえませんか」という返信をして、現在相手からの連絡を待っている状態です。いくらなんでも、具体例なしにクレームをつけられても対応のしようがないので。)
もし、こちらの不備であれば完全に悪いのですが、今回のクレームで引っ掛かるのが「文法的な間違い」というものです。
これが例えば、専門用語の明らかな間違いや、誤字脱字があまりにも多い、といった内容であればこちらが100%悪いのですが、「文法が間違っている」というのは、必ずしも悪い事ではないと思うのです。
なので今回は、「翻訳と受験英語は全く別もの」ということを書こうと思いました。
この方は大学生ですし、恐らく大学受験では英語をしっかりと勉強されたのだと思います。
文法も単語もしっかりと勉強して、苦手ななりに構文把握や日本語訳、英作文等に取組んで、受験本番でも良い成績を収められたのだと思います。
そんな人からすると、「プロの翻訳」と名乗っている僕が明らかな文法間違いをしていると、確かに信憑性は揺らいでしまいます(なおかつ直接会っていないので、ウソをついているかどうかも分かりません)。
だがしかし、です。
翻訳をしていて思うのは、「英語の文法に則っていたら翻訳はできない」ということです。
(僕も勉強中の身ですが、勉強をすればするほど、そして実際に仕事をすればするほど、このことは痛感します。)
どういうことか、例を見てみましょう。
例①
The video includes an ominous list of "don'ts".
この一文、あなたならどう訳しますか?
これは翻訳勉強向けの本にあった一文なので少々難しいのですが、それでは次の例はどうでしょう?
例②
The service includes a welcome drink, relaxation massage, dinner show and morning call.
(文は適当です)
この文章を受験英語風に訳すと、次のようになるでしょうか。
A:「そのサービスはウェルカムドリンク、リラクゼーションマッサージ、ディナーショー、モーニングコールを含んでいます。」
恐らくこうなると思いますし、僕も受験だとこう書くかもしれません。
しかし、上の文章、果たして「読みやすい日本語」でしょうか?
僕は、日本語では「〜を含んでいる」より「〜が含まれる」という受け身が使われることが多いような気がします(感覚的に)。
なので例えば、上の文だと
B:「サービスにはウェルカムドリンク、リラクゼーションマッサージ、ディナーショー、モーニングコールが含まれています」
としたほうが、自然だと思うのですが、みなさんはどう思われたでしょうか?
受験英語だと、Bは恐らく間違いだと思います。なぜなら英語に受け身形が使われていないから。
(僕は予備校に通ったこともなく、受験英語を教える側になったこともないので本当は分からないのですが。僕だと受験でもAを書いてしまう気がします。)
でも、Aが読みやすい文章かどうか、と考えることを考えると、案外Bのほうが正解だったりするかもしれません(正解があるかどうかもわかりませんが)。
ですので、英語と日本語を比較して、文法的な間違いがあるからあなたの英語力は信用できないというのは、あまりに短絡的な発想だと思うのです(もちろん、部分的には正しい事だと思いますが)。
ちなみに、①の日本語訳の例は次のようなものでした。
「ビデオでは恐ろしげな禁止事項も並べられる。」
ここでも、英語は能動態ですが日本語は受動態になっていますよね。
これはあくまで一例なのですが、英語と日本語は根本的に文の作りが違っていたり、語感が違っていたりするんですね。
英語だと生物以外のものが主語になったり、能動態が多く使われたり、長い主語は嫌われる(さっきの②の場合だと、Welcome drink, relaxation massage, dinner show and morning call are included in the service とするのはとても気持悪いです)、といったような特徴があると思います。
逆に日本語だと、主語が明示されなかったり、受け身(〜される、〜られる)という表現が多く使われたりと、別の特徴を持っています。
なので、今回のクレームが、上記のような「受験英語的にいうと正しいけど、翻訳として考えると必ずしも正しいわけではない(「間違っている」という主張は間違っている)」ものである可能性もあるわけです。
まだ、どこが間違っているかの指摘を頂いていないので、もしかするとこちらの完全な間違いかもしれないのですが、それでも今回書いたようなことになっている可能性は多いにあるわけですので、翻訳という仕事について、自分が思ったことを書いた次第です。
翻訳をしていると、文法的に正しい訳をしていても、仕上がった後で全体を読んでみると不自然な文章になっていることもあるので、「木を見て森を見ず」という状態にはならないように、気をつけていかないといけないな、と思っています。
(これは全ての仕事にあてはまることかもしれませんが)
仕事に関しての記事は、「時間とエネルギーを割くのだからきちんと対価を支払うべき」ということについてのこちらの記事や、LinkedInを通してインドから仕事を頂いたことについてまとめたこちらの記事、クラウドソーシングサイトを使って仕事をやっていく可能性について書いたこちらの記事、そして組織に属さず仕事を3ヶ月程やってみた時に書いたこちらの記事もありますので、これらも読んで頂ければ、何かの参考になるかもしれません。
この前、翻訳の案件を納品したら相手から「英語が苦手な私でも明らかに分かる、文法の間違いがありました。失礼ですが、どれ程の英語力なのでしょうか」というメールが後から届いてびっくりしました。
この仕事は、
・数ページの論文を日本語に訳す
・相手は大学生(授業かレポートでいるらしい)
というもので、クレームが来たのは料金が支払われてからでした。
クラウドソーシングサイトを使っての、ちょっとした案件だったのですが、まさかこんなクレーム(?)が来るとは思ってはいませんでした。
(そのメールではとりあえず謝罪をして、こちらの非を認めつつ、「どこが間違っているか、具体的に教えてもらえませんか」という返信をして、現在相手からの連絡を待っている状態です。いくらなんでも、具体例なしにクレームをつけられても対応のしようがないので。)
もし、こちらの不備であれば完全に悪いのですが、今回のクレームで引っ掛かるのが「文法的な間違い」というものです。
これが例えば、専門用語の明らかな間違いや、誤字脱字があまりにも多い、といった内容であればこちらが100%悪いのですが、「文法が間違っている」というのは、必ずしも悪い事ではないと思うのです。
なので今回は、「翻訳と受験英語は全く別もの」ということを書こうと思いました。
この方は大学生ですし、恐らく大学受験では英語をしっかりと勉強されたのだと思います。
文法も単語もしっかりと勉強して、苦手ななりに構文把握や日本語訳、英作文等に取組んで、受験本番でも良い成績を収められたのだと思います。
そんな人からすると、「プロの翻訳」と名乗っている僕が明らかな文法間違いをしていると、確かに信憑性は揺らいでしまいます(なおかつ直接会っていないので、ウソをついているかどうかも分かりません)。
だがしかし、です。
翻訳をしていて思うのは、「英語の文法に則っていたら翻訳はできない」ということです。
(僕も勉強中の身ですが、勉強をすればするほど、そして実際に仕事をすればするほど、このことは痛感します。)
どういうことか、例を見てみましょう。
例①
The video includes an ominous list of "don'ts".
この一文、あなたならどう訳しますか?
これは翻訳勉強向けの本にあった一文なので少々難しいのですが、それでは次の例はどうでしょう?
例②
The service includes a welcome drink, relaxation massage, dinner show and morning call.
(文は適当です)
この文章を受験英語風に訳すと、次のようになるでしょうか。
A:「そのサービスはウェルカムドリンク、リラクゼーションマッサージ、ディナーショー、モーニングコールを含んでいます。」
恐らくこうなると思いますし、僕も受験だとこう書くかもしれません。
しかし、上の文章、果たして「読みやすい日本語」でしょうか?
僕は、日本語では「〜を含んでいる」より「〜が含まれる」という受け身が使われることが多いような気がします(感覚的に)。
なので例えば、上の文だと
B:「サービスにはウェルカムドリンク、リラクゼーションマッサージ、ディナーショー、モーニングコールが含まれています」
としたほうが、自然だと思うのですが、みなさんはどう思われたでしょうか?
受験英語だと、Bは恐らく間違いだと思います。なぜなら英語に受け身形が使われていないから。
(僕は予備校に通ったこともなく、受験英語を教える側になったこともないので本当は分からないのですが。僕だと受験でもAを書いてしまう気がします。)
でも、Aが読みやすい文章かどうか、と考えることを考えると、案外Bのほうが正解だったりするかもしれません(正解があるかどうかもわかりませんが)。
ですので、英語と日本語を比較して、文法的な間違いがあるからあなたの英語力は信用できないというのは、あまりに短絡的な発想だと思うのです(もちろん、部分的には正しい事だと思いますが)。
ちなみに、①の日本語訳の例は次のようなものでした。
「ビデオでは恐ろしげな禁止事項も並べられる。」
ここでも、英語は能動態ですが日本語は受動態になっていますよね。
これはあくまで一例なのですが、英語と日本語は根本的に文の作りが違っていたり、語感が違っていたりするんですね。
英語だと生物以外のものが主語になったり、能動態が多く使われたり、長い主語は嫌われる(さっきの②の場合だと、Welcome drink, relaxation massage, dinner show and morning call are included in the service とするのはとても気持悪いです)、といったような特徴があると思います。
逆に日本語だと、主語が明示されなかったり、受け身(〜される、〜られる)という表現が多く使われたりと、別の特徴を持っています。
なので、今回のクレームが、上記のような「受験英語的にいうと正しいけど、翻訳として考えると必ずしも正しいわけではない(「間違っている」という主張は間違っている)」ものである可能性もあるわけです。
まだ、どこが間違っているかの指摘を頂いていないので、もしかするとこちらの完全な間違いかもしれないのですが、それでも今回書いたようなことになっている可能性は多いにあるわけですので、翻訳という仕事について、自分が思ったことを書いた次第です。
翻訳をしていると、文法的に正しい訳をしていても、仕上がった後で全体を読んでみると不自然な文章になっていることもあるので、「木を見て森を見ず」という状態にはならないように、気をつけていかないといけないな、と思っています。
(これは全ての仕事にあてはまることかもしれませんが)
仕事に関しての記事は、「時間とエネルギーを割くのだからきちんと対価を支払うべき」ということについてのこちらの記事や、LinkedInを通してインドから仕事を頂いたことについてまとめたこちらの記事、クラウドソーシングサイトを使って仕事をやっていく可能性について書いたこちらの記事、そして組織に属さず仕事を3ヶ月程やってみた時に書いたこちらの記事もありますので、これらも読んで頂ければ、何かの参考になるかもしれません。
翻訳家ということで、ご相談させていただきたいのですが、英語の能力を示す成績等ございますでしょうか。
返信削除現在、翻訳してくださる方を募集中でございます。
英語が堪能な方を探しているのですが、TOEFL110点以上、もしくはTOEIC950点以上ございますでしょうか。
コメントいただけますと幸いでございます。
このコメントは投稿者によって削除されました。
返信削除コメント頂きありがとうございます。
返信削除私の英語力を示す数値ですが、TOEICスコアの800点のみでございます。
ただ、現在複数の翻訳会社に在宅翻訳者として登録を行い仕事を行っております。詳しいお話をさせて頂ければと思っておりますが、いかがでしょうか。
以下に当方の実績もお伝えさせて頂きますので、そちらもご参照のうえ、以後メールアドレス ashf1739(a)tatsuyayabuuchi-world.com までご連絡を頂ければ幸いです。
メールにて、過去の成果物のデータ等もお送りさせて頂きますので、ご検討の程よろしくお願い致します。
■実績■
○英語→日本語
・書簡翻訳(一般文書)
・SNSと選挙に関する洋書(60頁)
・行政関連申述書
・経済論文抄訳
・論文和訳(会計分野、情報系分野)
・電気電子廃棄物ビジネスウェブサイト
・インド西ベンガル州日本企業・住民向けニュースレター
・映画使用のための英語論文の和訳(地学系分野)
○日本語→英語
・商品説明書(伝統工芸品、美顔器、電子機器)
・観光アプリ文章
・吹田市立図書館案内
・JETRO関連申込文書
・ビジネスマナーブログ
・高級旅館ウェブサイト
・ウェブサービス会社ウェブサイト
・スマホアプリ開発仕様書
○その他
・ネット動画の英日字幕翻訳(60分)
・「日本を伝えるフリーペーパーinインド」の文章英訳
・セラピー童話英訳
・日本ギャップイヤー推進協会ギャッパーエッセイ英訳