2013年12月4日水曜日

「楽しい仕事」と「プロ意識」

先日NHKで放送された「スイッチインタビュー 達人達(たち)」を見ました。

福永祐一×渡辺明

僕は大学の初めくらいまで将棋を指していて、渡辺さんや羽生さんが番組に出るときは、よく見ます(今はもっぱら、指す側ではなくて見る側です)。


この番組の中で、渡辺さんが言っていた言葉で印象深い言葉がありました。

将棋をして「楽しいですか」とよく聞かれますけど、そんなことないです(笑)。強い人と指せば負けることもあるし、とにかく大変。楽しいとは思っていないです。


この言葉に妙に納得したのですが、確かによく、「好きなことを仕事にしているっていいね」という言葉は、世間でも言われている気がします(僕も仕事柄、そんな風に言われることが多いです)。


ですが、僕も今の仕事をしていて、楽しいと思ったときはそんなに多くはないです(もちろんあります)。
どちらかというと、しんどい時とか、辛いときの方が多いと思います。


◎やりがいや楽しさだけでは、仕事はできない

よく、「やりがいのある仕事がしたい」とか「どうせ仕事をするなら楽しみたい」という言葉を耳にします。

こういうのに対して「やりがいの搾取だ」なんていう論調もありますが、僕も今仕事をしていて思うのは、「やりがいだけじゃ仕事はできんな」ということです。

この「やりがい」や「楽しさ」という言葉も、結構曖昧です。

よく使われるこの言葉は、一体何を指しているのか?


仕事をバリバリこなすことが、「やりがい」なのでしょうか?
営業をして、仕事を取ってくることが「やりがい」なのでしょうか?

これは、ある意味では正しいと思います。

ですが、これだけでは仕事はできない。


例えば、金額。

会社員をして月給を頂いていると、あまり考えないかもしれませんが、身一本で仕事をしているので、毎月の生活費を考えたり、仕事の分量に対する額を交渉したりで、これはこれで大変です。これはとてもじゃないですが、「やりがい」なんかじゃありません(笑)
他には、仕事をして何を提供するのか、というのも大事です。
翻訳の品質だって保証する必要がありますし、誤字脱字、誤訳によっては、人の命に関わることだってある。

なので、仕事をしている時には、もちろん気持のよい訳ができたりするときもあるので、「楽しい」と言えば楽しいですが、何回もデータを一字ずつ追ってチェックをしたり、知らない単語を詳しく検索したり、地味なことも多いので、疲れることも多々あります。最終的に、クライアントさんから満足頂いて、高い評価を頂ければもちろん嬉しいですが、そこに至るまでは苦しいことも大変なことも沢山あります。

なので、一概に「仕事は楽しい」なんて言えるものではないのかな、と思います。結果を残して、評価をされての「やりがい」「楽しさ」なら良いですが、今世間で言われている「やりがい」や「楽しさ」というのは、どうも自己満足の意味を持っているきらいが大きいんじゃないか、と勝手に思っています。



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◎必要なのはプロ意識

そこで必要になってくるのは、一人ひとりのプロ意識ではないでしょうか。

自分の仕事の場合、プロ意識というのは「どこまでこだわり抜くか」ということだと思っています。(他の仕事でも一緒かもしれませんね。)

言葉を見て、いろんな表現が思い浮かぶ中で、なぜ自分はこの表現を選んだのか。

小さなミスをしないのはもちろん、こういう「こだわり」を持つことは大事だと思います。それを相手に説明する必要はありませんが、細かいところを意識するかしないかで、自分がアウトプットできるもの、自分の中に蓄積されることは多くなるのではないでしょうか。
(魂は細部に宿る、といいますし、プロ野球選手の素振りでも、一回一回で何をイメージし、フォームをどう意識するのかで、その積み重ねの量、質共に変わってくるのは明らかでしょう。)



結局は「自分は相手に何を提供するか」を考えて、実行するのが大事なのではないかと思います。

仕事は一人ではできません。サポートが必要だったり、そもそも購買者、ユーザーがいなければ商売はできません。


そういうところをどこまで意識して、細部をこだわって仕事ができるか。自分でも忘れそうになりがちですが、こういう部分を心の片隅に置いて、反芻して仕事をしていきたいです。

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